暗号資産に敵対的な姿勢を取ってきたSEC(米証券取引委員会)のゲイリー・ゲンスラー委員長は1月、トランプ氏が大統領に就任する日に同委員会を完全に去るつもりだと述べた。
同氏はSECトップの座を退くだけではない。委員としても留任しないため、暗号資産に対して強硬な姿勢を示してきた政策を擁護する立場でもなくなる。
ゲンスラー氏の退任は、トランプ次期大統領が就任宣誓を行う1月20日の正午に有効となるとSECはプレスリリースで発表した。
声明の中で、ゲンスラー氏はSECを「素晴らしい組織」と述べた。
「スタッフと委員会は、ミッションに深く根ざし、投資家の保護、資本形成の促進、市場が投資家と発行者の双方に同等に機能することに努めている。スタッフは、真に公に尽くしている」と述べた。
「一般的なアメリカ市民を代表して彼らとともに働き、わが国の資本市場が世界一であり続けることを確かなものにすることは生涯の名誉だ」
声明はさらに、バイデン大統領とSEC委員に感謝の意を表した。
2021年4月に就任したゲンスラー氏は、暗号資産業界に直接的な影響を与えた多くの執行措置と規則の制定を監督した。業界関係者は、同氏が暗号資産に対してライトなアプローチを取ることを期待していたが、SECは、前トランプ政権下でSEC委員長を務めたジェイ・クレイトン氏の下で行われたように、暗号資産発行者を標的とした執行措置を拡大し、暗号資産取引プラットフォームに対する訴訟を起こした。
SECは、ゲンスラー氏の在任中に、バイナンス(Binance)、バイナンスUS(Binance.US)、コインベース(Coinbase)、クラーケン(Kraken)、シェイプシフト(Shapeshift)などを提訴し、これらの取引所は未登録の証券仲介業者・清算機関だと主張した。
一方でゲンスラー氏は、暗号資産関連企業が10年間にわたって米市場への導入を試みてきたビットコインETF、イーサリアムETFを承認した。当初は反対していたが、SECに対する裁判所の判決により、最終的には承認に追い込まれた。
トランプ次期大統領は、後任となる人物をまだ指名していない。元SECで現在は弁護士のテレサ・グッディ・ギレン(Teresa Goody Guillén)氏、元通貨監督庁(OCC)長官代理でバイナンスUSのCEOを短期間務めたブライアン・ブルックス(Brian Brooks)氏など、多くの人物が候補として浮上している。前トランプ政権でSEC委員長を務めたクレイトン氏は、ニューヨーク南部地区連邦地検の検事に指名されている。同地検は司法省の中でも特に企業犯罪を取り扱うことで知られている。
ゲンスラー氏の辞任により、SECは共和党・民主党からのそれぞれ2名の委員で構成されることになるが、トランプ氏の後任が上院で承認されるまでは、共和党が3名の多数はを占めることはない。それまでは、大きな政策転換や執行の決定は行われない可能性がある。
プレスリリースの中でゲンスラー氏は、さまざまな訴訟を含め、自身の仕事を前任のクレイトン氏の業績を基にしたと述べた。
「SECの監察総監室(Office of the Inspector General)によると、前会計年度では、暗号資産市場は米国の資本市場の1%にも満たないにもかかわらず、SECへの情報提供、苦情、照会の18%を占めた」とプレスリリースには記されている。
「裁判所は次々と、投資家保護を目的としたSECの行動に同意し、有価証券が提供されている場合、その形態にかかわらずSECが法を執行できないという主張をすべて退けた」
しかし、ゲンスラー氏の退任発表の数時間前には、暗号資産ロビイストが起こした訴訟において、連邦第5巡回区控訴裁判所が「ディーラー」の定義を広げようとしたSECの取り組みは権限を越えているとの判断を下した。
参考資料:https://www.coindeskjapan.com/263227/
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