暗号資産(仮想通貨)市場は2024年、新たな局面を迎え、楽観的な見方が広がっている。過去1年半の混乱を乗り越え、ビットコインETF(上場投資信託)の承認に後押しされ、金融政策の転換と新しいWeb3イノベーションが暗号資産イノベーションの新たな道を切り拓いている。
分散型金融(DeFi)の発展は特に有望だ。中央銀行が利下げを示唆するなか、DeFiの利回りはオルタナティブな投資形態としてますます魅力的になっている。さらに、新たなエコシステムと新世代のプロトコルが、この領域に新しい金融プリミティブ(基本要素)を導入しつつある。
しかし、広範な普及という大きな壁を超えるためには、DeFiはこれまでとは異なる必要がある。DeFiの進化に必要な重要な柱は何か、そしてそれはどのような形で現れているのかを探ってみよう。
DeFi 第1フェーズ:インセンティブ、利回り、モノリシック、ハッキング
DeFi市場の第1フェーズは、さまざまなエコシステムにおいて人為的で持続不可能な利回りを生み出す、高度にインセンティブ化されたエコシステムの立ち上げが特徴的だったが、同時にプロトコル・イノベーションの基盤も整った。
インセンティブ・プログラムの実行可能性にはしばしば疑問が呈されたが、多くのエコシステムにおける立ち上げ時の問題に対応したものだった。
残念なことに、市場環境の変化に伴い、これらのエコシステムにおけるDeFi活動のかなりの部分が減少し、利回りはリスクリターンの観点からもはや魅力的でないレベルまで低下した。
DeFi 第1フェーズのもう1つの注目すべき点は、広範な機能を網羅する複雑なプロトコルが大多数であったことで、これらを金融プリミティブと呼ぶべきかどうかという疑問が生じた。
結局のところ、アーベ(Aave)のようなプロトコルは何百ものリスクパラメーターを含み、非常に複雑かつ一体化した機能を実現している。
このような大規模なプロトコルは、新しいエコシステムで同様の機能を実現するためにフォークすることが多く、その結果、アーベ、コンパウンド(Compound)、またはユニスワップ(Uniswap)やさまざまなEVMエコシステムの間でプロトコルのフォークが爆発的に増加した。
一方、セキュリティ攻撃がDeFi普及の主な障壁として浮上した。ほとんどのDeFiハッキングは、プロトコルのTVLの大部分が失われることになった。ハッキングと利回り低下が組み合わさって、投資家に二の足を踏ませることになった。
だがこうした課題にもかかわらず、DeFi 第1フェーズは大成功を収めた。エコシステムは、信じられないような厳しい市場環境に耐え、強力な普及レベルと活気あるコミュニティを維持できた。
しかし、DeFiの次のフェーズは、新たな市場環境とメインストリームへの普及に必要な技術イノベーションに対応できるだろうか?
あるテクノロジートレンドの第2フェーズが第1フェーズを大きく上回る普及を達成するためには、市場環境の変化か、新世代の顧客を魅了するテクノロジーの進化が必要だ。DeFi 第2フェーズの場合、その普及のマイルストーンを以下の3つに大別することができる。
- 新しいDeFiプロトコルとアプリを開発する開発者
- ウォレットや取引所からDeFiにアクセスする 個人投資家
- より洗練されたユースケースと規模のためにDeFiを利用する機関投資家
DeFi 第2フェーズ(開発者向け):より粒度が高く、新しいプリミティブ
開発者にとって、DeFiの新たな段階はインパクトのあるトレンドに支配されている。プロトコルは大規模かつ一体化した構造から、より小規模で、粒度の細かいものに移行しつつある。
私はこの動きを「DeFiマイクロ・プリミティブ」と呼んでいる。Morpho Blueのようなプロトコルは、洗練された機能を組み合わせることができるレンディング用プリミティブを可能にしている。
加えて、DeFi 第2フェーズの開発者は、DeFiの新たな金融プリミティブに新たな可能性を提供する、EigenLayerやCelestia/Mantaのような新しいエコシステムの出現から恩恵を受けるだろう。これらの新しいエコシステムにおける初期のイノベーターには、RenzoやEtherFiのようなプロトコルが含まれる。
DeFi 第2フェーズ(機関投資家向け):リスク管理、ストラクチャード商品
DeFi 第1フェーズにおける機関投資家への普及は、主に暗号資産企業によって牽引された。これが進化するためには、DeFi 第2フェーズは機関投資家の参入障壁を下げる堅固な金融サービスとなる必要がある。
リスク管理は間違いなくDeFi 第2フェーズに不可欠なものとなり、機関投資家はDeFiでリスクリターンを正確にモデル化できるようになるはずだ。これにより、より洗練されたリスク管理サービスが実現するだろう。
また、DeFi 第2フェーズのアーキテクチャーの粒度が細かくなっていることは、機関投資家にとって大きな導入課題となる。つまり、マイクロ・プリミティブを機関投資家が必要とする洗練性と堅牢性を実現したより高次のストラクチャード・プロトコルに統合する必要がある。
機関投資家がDeFiの次のフェーズに進むためには、証拠金レンディング、保険、クレジットなどのサービスが必要だ。
異なるプロトコルの利回りの提供とリスク管理、レンディングや保険の仕組みを組み合わせたものは、機関投資家のフレームワークに適したストラクチャード商品の一例だ。
規制は依然として、機関投資家へのDeFi普及の決め手となる要素だ。しかし、リスク管理や保険といった機関投資家向けのプリミティブがなければ、詳細な規制フレームワークの整備はほぼ不可能だ。それらがない場合、強引な規制が唯一の選択肢となるかもしれない。
このような観点から、DeFi 第2フェーズで機関投資家グレードの機能を開発することは、単に普及を促進するだけでなく、この分野の存続的なリスクを軽減することにもなる。
DeFi 第2フェーズ(個人投資家向け):UXとシンプルなサービス
個人投資家は、DeFi市場の混乱の影響を最も受けた層だ。しかし、新たなエコシステムの出現により、個人投資家は着実に戻りつつある。
とはいえ、まだDeFiプロトコルを使用することは、ほとんどの個人投資家にとっては未知の概念であり、DeFiプリミティブが専門的なことがさらに困難さを増している。
DeFiの最大の課題は、UX(ユーザーエクスペリエンス)の向上が普及に不可欠ということだ。
しかし、UXを考慮する場合、DeFiプロトコルとのやり取りを単純化するだけでなく、もっと野心的になることができる。ウォレットまわりのエクスペリエンスは過去5~6年間ほとんど変わっていない。DeFiを中核的な要素として統合したウォレット・エクスペリエンスが、個人投資家への普及には不可欠となる。
さらに、個人投資家とDeFiプロトコルのやり取りは、DeFiの専門家でなくても問題なく可能な、よりシンプルなものとして抽象化されるべきだ。
アーベやコンパウンドのようなプロトコルとやり取りする代わりに、ワンクリックで適切な担保レベルと保護メカニズムを備えたローンをリクエストできることを想像してみてほしい。DeFiのUXは明らかな課題であり、早急に対処する必要がある。
マクロ経済情勢と暗号資産市場の現状が合わさって、DeFiの新たなフェーズが登場しつつある。DeFi 第2フェーズは、開発者が新たなプロトコルを作成するための、より粒度が細かく、コンポーザブル(組み合わせ可能)な金融プリミティブと、機関投資家向けの堅固な金融サービス、および個人投資家にとっての導入障壁を取り除く、より優れたUXを組み合わせなければならない。
DeFiの第1フェーズは、主に人為的な金融インセンティブによって推進されたが、DeFi 第2フェーズは、伝統的金融に並行する金融システムとしての実行可能性を裏付けるために、より実用性重視で、有機的で、よりシンプルであるべきだ。
参考資料:https://www.coindeskjapan.com/217206/
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Source: Rippleリップル)仮想通貨情報局